膜ろ過を中心とした都市水循環システムの構築

2013.04.08 (2016.05.04 改訂)

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現在、世界の都市部における水代謝システムは、大量輸送、大量消費を前提とした一過性の上下水道施設を基に構成されている。しかし、各地で頻発する水不足、水道水源の汚染、クリプトスポリジウムによる集団感染など、一過性の都市水代謝システムには近年多くの綻びが目立ち始めている。今後、安全で良質な水を確保し続けていくためには、下水再利用や多元給水等を積極的に導入した新たな水代謝システムが必要となる。
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(1)浄水処理

膜による浄水処理は、従来の砂ろ過法と比較して簡単に処理水質を飛躍的に向上させることが出来る一方で、施設の小型化・分散化が容易に可能であることから、水の再利用を前提とした新たな水代謝システムの基盤要素技術となりうる潜在力がある。一方、限外ろ過膜や精密ろ過膜を用いる浄水処理は溶存有機物の除去は困難であり、消毒副生成物であるトリハロメタンの生成抑制が課題となる。
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膜ろ過の前処理技術1:前凝集

これまで、膜ファウリングの抑制及び溶存有機物の除去を目的として、既存の凝集沈殿法と膜を組み合わせた「凝集-膜ろ過ハイブリッドシステム」が提案され、様々に試行されてきた。濁質の凝集機構は50年以上にわたり様々に検討されている。一般的に、荷電中和による凝塊化、またはスウィープフロック形成による共沈が凝集機構として提案されているが、原水中に含まれる有機物の特性、pH、凝集剤注入率、撹拌強度など、フロック形成に係わる条件が多いため、最適凝集条件の選択は経験によるところが大きい。特に、凝集-膜ろ過ハイブリッドシステムは、有機物を良好に除去しうる凝集条件と、膜ファウリングを抑制しうる凝集条件が一致しないことが既存の研究において多数報告されており、未だ本システムを効率的に制御する方法は未だ明かになっていない。
膜ファウリングには、「サブマイクロフロック」と呼ばれる孔径付近の粒子が関与する。一方、凝集プロセスによって生成するサブマイクロフロックの挙動は未だ不明な点が多く、どのような条件でどのくらいの大きさのサブマイクロ粒子がどのくらいの量発生するのか、またどのような特性を持ったサブマイクロ粒子が膜ファウリングに影響を及ぼすのか、世界中で様々に議論されている。凝集-膜ろ過ハイブリッドシステムの効率的な運用のためには、膜ファウリングの進行を促進する凝集フロック特性を明らかにし、前凝集処理における最適凝集条件を容易に設定しうる凝集指標を探索する必要がある。
本研究では、サブマイクロ粒子のゼータ電位に着目し、凝集剤注入率とpHがマイクロフロック(<0.5 &mu;m)及びナノフロック(>0.5 &mu;m)の表面電荷特性に及ぼす影響について検討する。また、凝集-膜ろ過ハイブリットシステムにより得られた膜閉塞ポテンシャルの結果と前述した粒子特性との結果を統合することで、膜閉塞の抑制に向けた凝集条件の設定指針を作成した。
本研究の結果、PAC注入率がマイクロフロックの等電点に影響があるが、ナノフロックの等電点への影響は少ないことが明かになった。また、撹拌強度はマイクロ、及びナノフロックの等電点に影響がないことが明かになった。ここで得られた結果を基に、現在ではナノフロックのゼータ電位をゼロにするような凝集剤を開発している。また、凝集時に生成するメソフロックの生成機構を、化学反応速度論的なアプローチによる解明を試みている。
これらの研究が進むことで、膜閉塞の抑制に向けた凝集条件の設定指針が明らかになり、既存の浄水施設における膜ろ過の普及が加速するものと期待する。

(担当:丁青)

膜ろ過の前処理技術2:吸着

これまでに膜ろ過の前処理によるバイオポリマー除去及び不可逆ファウリング抑制を目的としたハイブリッド膜ろ過システムが研究されており、主に活性炭吸着及びイオン交換処理を前処理とした膜ろ過試験が試みられている。その結果、疎水性有機物中のフミン酸等に対して高い除去率を有する一方で、親水性有機物であるバイオポリマーに対しては、除去率が低いことが報告されている。
本研究では、親水性バイオポリマーとの高い親和性が期待される材料に着目し、本材を使った新規バイオポリマー吸着樹脂の開発を行った。
市販の樹脂及び開発樹脂の回分吸着試験を行うことによって、模擬原水(アルギン酸ナトリウム、デキストラン及びフミン酸ナトリウム)及び実原水を用いた開発樹脂の(1)吸着特性、(2)再生能力及び(3)バイオポリマー吸着性能についての検討を行った。また、ラボスケールの膜ろ過実験を行うことによって、膜ろ過運転時間から(4)不可逆的膜ファウリング抑制効果の評価を行った。その結果、開発樹脂はアルギン酸に対して最も高い吸着性能を有しており、低濃度(0.5mg-C/L)においてアルギン酸はフミン酸よりも約40倍高い吸着量を有していることがわかり、ある条件において、約100%再生可能であることが明らかになった。また市販樹脂と比較して、開発樹脂のみ43%と高いバイオポリマー除去性能を有していることがわかり、開発樹脂を前処理として用いることで、約4倍運転時間を延長できることがわかった。

(担当:小清水)


(2)下・排水処理

省エネ・多機能型の膜分離導入下排水処理システムの実用化

2014.04.07

1990年代初期から我が国が国家プロジェクトとして研究開発投資を継続してきた膜分離活性汚泥法(MBR)については、生物学的処理と膜ろ過を組み合わせた複合システムであり。未だ研究余地は大きく、我が国の技術力を生かせる分野である。日本がこのビジネス分野で成功するには、MBRの「信頼性向上+低コスト化」実現に向けた研究の推進が急務である。さらに、MBR余剰汚泥の処理では、リンの回収も考慮する必要がある。
本研究では、研究目的(その1);MBRの「信頼性向上+低コスト化」実現、研究目的(その2);MBR余剰汚泥からのリンの回収システムの構築、を設定した。我々は既往の研究によって、研究目標を達成するための基礎となる知見を得ている。本研究では実規模相当のパイロットプラントによって省エネ型PTFE中空糸モジュ-ルを組み込んだ次世代型のMBRとして渡辺らが開発したbMBR(baffled MBR)の「信頼性向上+低コスト化」を実現し、小型のパイロットプラントによる実験によって,bMBR余剰汚泥からのリンの回収システムを構築する。